中国の工芸で象牙を細く細く彫った仕事があります。
見事な仕事で当時はヨーロッパの王室から注文されたりもしたそうです。
ファンの骨などにその仕事が観ることがあります。
需要があればそれをつくる人が現れます。
フランスでこの精緻な象牙彫りがつくられるようになります。
フランスでこの仕事が施されたものを観ておりましたらお店の人がしきりと『ディエップ』と言っていました。
何のことかと思っていましたらフランスの地名でした。
パリから1番近い港町です。
17世紀にはフランス一番の港となり19世紀にはリゾート化も進みます。
また、100年戦争やフランスとイギリスとの争奪戦・フォンテンブローの勅令・第2次世界大戦でのディエップの戦いなど戦争の拠点としての歴史もあります。
17世紀ころからアフリカから材料となる象牙が荷下ろしされていたそうです。
材料の象牙があるところに象牙彫りの職人が集まったのですね。
仕事に地名が付くことはママあります。
ブリストルガラス・リモージュ焼き・
同じようにディエップと言えばこの精緻な象牙彫りの仕事をさすのですね。
中国の作品とディエップには大きな違いがあります。
それはスィートさ。
感覚的に甘いのです。
中国の作品には可愛いものはあってもスィートなものは観たことがありません。
文化の違いですね。
私は小箱が好きでいくつか集めたものがあります。
その中のディエップの箱です。
外は象牙で内側はべっ甲でできていて、蓋にガラスでおおわれた象牙彫りの仕事が観られます。
アンティークジュエリーのように男性から贈られたものでしょうか、愛の言葉が入っています。
矢たてを舟にして目隠しのリボンを帆にしたてて波を行くエンジェルは図象学的な意味もあります。
また、画面の上を飛んでいる鳥をご覧ください。
ラヴレターを運んでいて言葉まで彫られています。
もう一つご覧ください。
これも内側はべっ甲です。
全体をバラの花とリボンで装飾されていて、冠とバラの手綱、プードルのような犬と共にイニシャルも彫られています。
そして画面の下のエンジェルの足もとを観ますと
やはり愛の言葉が彫られています。
見事です。
小品をもう1点
紙に何か書いているフェアリーです。
ラブレターでしょうか?
ペンを持つ手元が立体的に良く彫られています。
ファンのお話もいたしましたのでファンのコレクションの中のディエップの物もご覧ください。
3人の天使を中心に小動物・鳥・羽根の付いた矢・中国人が彫られた作品です。
シノワズリーのロココの時代の物で、象牙部分に彩色された物は非常に珍しいです。
もう一つは花と鳥と蝶が描かれた物です。
部分で鳥の羽根を貼付けてあります。
象牙を細かくくり抜いた繊細な仕事は中国の仕事と同じです。
以前、ヨーロッパから中国に注文して糸のように繊細に彫らせた象牙の骨の扇には要の部分に時計が仕込んである立派な物でした。
立体も彫られていますが毛彫りのような抜きの仕事や繊細で細かな仕事が特徴です。
ディエップには象牙美術館という施設があるそうです。
行ってみたいと思います。
ジュエリーも作られていていくつか扱ったことがありますが、希少な上エタラージュらしいものは滅多にありません。